--- title: 「時代の変わり目」を意識していちばん気をつけなければならないのは、優等生たちだ。 author: kazu634 images: - "ogp/2007-11-11-00000634.webp" date: 2007-11-11T15:04:05Z categories: - 引用 tags: - book ---
『ウェブ時代をゆく』という本を読んでいました。この本は梅田望夫という人が書いている本です。おそらく茂木健一郎と一緒に『フューチャリスト宣言』を書いた人として有名なのかな(インターネット界隈ではかなりの有名人なんだけど)。
この人が現在地球上で進行しつつあるインターネットにもたらされる変化を”provocative”に書き上げている本です(それにしてもPaul Grahamのエッセー以外で”provocative”という表現を使うことになるとは思わなかったぜよ。ちなみにPaul Grahamという人は最近でいうとベンチャーキャピタリストとしての経験から「どの大学に行くか何て関係ない」と言い切った人です)。
この本の中で書かれているのはこれからの世界がどうなっていくのかということを示唆しているように感じられます。順番を追っていくとすると、
というようなことになっています。こういう環境が整ったことで、何かを学ぼうとする際にあらゆる分野で私たちはある一定の所までは凄まじい早さで習熟することができるようになります。梅田さんはこれを「学習の高速道路」と呼んでいます(将棋の羽生さんから教えてもらった考えだそうです)。そして羽生さんが問題提起しているのは、「学習の高速道路」が存在していることではなく、次のようなことでした:
しかし「学習の高速道路」も、高速道路を走りきったなと思ったあたり(「その道のプロ」寸前)で大渋滞が起こるのだと羽生は言う。同質の勉強の仕方でたどり着けるのはそこまで。誰にも機会が開かれるゆえ参入者も増え、しかも後の世代も次々に疾走してきては「その道のプロ」寸前での大渋滞にはまる。「その道のプロ」としてメシを食い続けていけるかどうかは、大渋滞にさしかかった後にどう生きるかの創造性にかかる。これが羽生の問題提起であった。
この問題提起に対して梅田さんは次のように述べています:
大渋滞の後でサバイバルするには、大渋滞を抜けようと「高く険しい道」を目指すか、大渋滞にさしかかったところで高速道路を降りて道しるべのない「けものみち」を歩いてゆくか、その二つの選択肢があると私は思う。そのどちらの道を目指すにせよ、自らの「向き不向き」と向き合い、自らの志向性を強く意識し(それが戦略性そのもの)、「好きを貫く」ことこそが競争力を生むと私は考える。
こうした自分の意志が重要になると梅田さんは問題提起していました。ここまでは社会人として現在活躍している人にどちらかというと警鐘を鳴らしている(こうした変化は確実に20~30年以内には現実のものになりそう…なので、そうした変化について行けないとその人の市場価値がcommodityとなってしまう)内容といえました。
ちなみに若者に対してはこんなことを言っています:
「時代の変わり目」を意識していちばん気をつけなければならないのは、優等生たちだ。優等生とは、古い仕組みの中で、もっとも適応できてきた人たちだからだ。「一身にして二生を生きる」くらいガラッと変わった世界に、突然40~45歳くらいで投げ出されてみると、いちばんに淘汰される可能性がある。ここ数年、積極的に日本の若い人たちと接する時間を増やしていて思うのは、優等生ほど心の中に「古い価値観」がきちんと刷り込まれているということだ。逆に言えば「古い価値観」を信じることが出来たから「いい学校へ、いい大会社へ」という「人生のレール」なるものを走ることができ、いまここで起きている大変化からも冷静に距離を置くことが出来ているのかもしれない。別に明日から何もかもをがらりと変える必要はないが、「古い価値観」を少しずつでも疑ってかかるといい。
こういう部分を読むと、『なぜ若者は「半径1m以内」で生活したがるのか? 』の次の部分と対照させて読みたくなります:
社会の激変と処方箋なしの状況大いなる不安。そんな中、若者たちは、無理せずに、無駄なこともせず、細く長く生きるという「エコ体質」を身につけた。結果が出せる確信のない努力は自分自身を傷つけてしまうかもしれないから、冒険もしなくなった。あえて視野を狭め、実現可能な目標を追い、こじんまりとした楽しい生活を送る。平和だし、そこそこ豊かだし、「ここにあるもの以上にいったいなにがあるというのだろう?」と考えるようにもなった。
とりあえず今の一瞬一瞬の積み重ねが、これからの自分を左右することになるのは間違いないということはわかる。がんばれ、自分。
ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687) |