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司馬遼太郎さんは『坂の上の雲』の中で、こんな風に書いていますが、
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> 戦術の要諦は手練手管ではない。日本人の古来の好みとして、小部隊をもって奇策縦横、大軍を翻弄撃破するといったところに戦術があるとし、そのような奇功のぬしを名将としてきた。源義経の鵯越の奇襲や楠木正成の千早城の籠城戦などが日本人好みの典型であるだろう。
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> ところが織田信長やナポレオンがそうであるように、敵に倍する兵力と火力を予定戦場に集めて敵を圧倒するということが戦術の大原則であり、名将というのはかぎられた兵力や火力をそのように主決戦場にあつめるという困難な課題について、内や外に対しあらゆき駆け引きをやり、いわば大奇術を演じてそれを実現しうる者をいうのである。あとは「大軍に兵法なし」といわれているように、戦いを運営してゆきさえすればいい。
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兵站の考え方というのは、「小部隊をもって奇策縦横、大軍を翻弄撃破する」とは相入れず、「必要なものを」「必要な時に」「必要な量を」「必要な場所に」手配するということを現実的に進めていくことだと思っています。
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英雄の誕生とは、兵站の失敗:
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> 「必要なことは補佐の権限の範囲で全部やれ。責任は私が取るから、派遣艦隊兵站監の名前を全面に出していい」
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> 「それだと兵站監が怨嗟の的になりますが」
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> 「貴官らに自由裁量を与えた以上、責任を追うのが小職の仕事だ
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忘れるな、英雄などというものは、戦争では不要だ。為すべき手順と準備が万全なら、英雄が生まれる余地はない。勝つべき戦いで勝つだけだ。英雄の誕生とは、兵站の失敗に過ぎん」
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> そして火伏は続ける。
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> 「小職の部下に英雄はいらんからな」
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勝てる軍隊とは、凡人を戦力化できる組織。兵站とは、凡人による軍隊組織を、正常に機能させるための機構だ。だから軍の組織が健全であり、兵站が機能しているなら、英雄など生まれない:
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> 「抽象的な質問だな。ここは士官学校じゃないんだ。話を進めてくれ」
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> 「ならば、軍隊を組織化する理由。それは暴力装置で凡人を戦力化するためだ。歴史を見ればわかる。少数精鋭のエリート部隊では、戦闘では勝てても、戦争という大きな枠組みでは勝てない。
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> 少数精鋭と言うと聞こえはいいが、要するに組織の不備を、少数の有能な人間への負荷で凌いでいるに過ぎない。勝てる軍隊とは、凡人を戦力化できる組織なんだよ。機構がしっかりしていれば、凡人が粛々と与えられた仕事をするだけで、組織は目標を達成でき、つまり勝利することができる。
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> 兵站とは、凡人による軍隊組織を、正常に機能させるための機構だ。だから軍の組織が健全であり、兵站が機能しているなら、英雄など生まれない」
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あのプロパガンダで描かれた降下猟兵部隊第七中隊が精鋭である根拠は、困難にもくじけない精神性だけであり、それが奇跡を生んだように描かれている。勝利への不屈の闘志みたいな精神論だ。たしかに戦意向上や士気を高める上では、それは必要だろう。しかし、あのプロパガンダによって、我々は大きなツケを払わされることになるだろう:
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> 「降下猟兵第七中隊は降下猟兵部隊の中で、戦術研究や装備の実戦テストも行う精鋭部隊だ。全員が基本戦術や戦技に対する豊富な知識と経験を有している。プロ中のプロだ。そうした精鋭だからこそ、演習や実験で起こる想定外の事態にも適切に対処できる。
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> だから、あのガイアスとの想定外の戦場で死傷者も出さず、作戦目的を達成できた。
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> だが、あのプロパガンダで描かれた降下猟兵部隊第七中隊が精鋭である根拠は、困難にもくじけない精神性だけであり、それが奇跡を生んだように描かれている。勝利への不屈の闘志みたいな精神論だ。たしかに戦意向上や士気を高める上では、それは必要だろう。
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> しかし、あのプロパガンダによって、我々は大きなツケを払わされることになるだろう」
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> 「どんなツケだ?」
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> 「凡人たちが英雄になろうとする。兵站の常識は無視され、冒険主義に走る指揮官が続出する。それにより多大な犠牲が生まれる。
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> 冒険主義はすぐに終わるとしても、死ななくてもいい人材が無駄に死ぬことになるんだよ。
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> 英雄でも凡人でも、人類には違いない。そして我々が守るべきは、その人類だ。そして無駄死にから英雄は生まれない、いや、それを英雄にしてはいかんのだ」
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<hr>
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