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サークルの原稿 kazu634 2007-12-16 /2007/12/16/_741/
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つれづれ

 現在はほとんど活動に参加していないが、書評誌をつくるサークルに所属しています。で、忙しい中ではあるわけですが、とにかく原稿を書いたわけです。えぇ。やっつけなのはわかっているのですが、とりあえずここにも貼り付けておきますね。

 コーナーは「外国文学」という題で、

  • 想定する読者: あんまり海外の小説を読んでいない人
  • 読んだ後どうして欲しい: 興味持ってもらい、あわよくば生協の売り上げに貢献!

というようなことを意図していたりします。

Awakening

世界初(?)の不倫を肯定した小説:価値が揺らぎ始め、「女性とはどうあるべきか」という共通認識が崩れ始めた時代に書かれた作品。フェミニズム的な考えが勃興しつつある時期に書かれ、ある意味で現代日本と共通するものが伺える作品と言える。

 最近の日本ではだいぶ時代遅れになってきていますが、いまだに女性の理想像として「良妻賢母」や「家庭の天使」といった言葉が存在していたりします。この「良妻賢母」だとか「家庭の天使」みたいな考え方というのは、資本主義の発展と共に生まれた考えで、そうした考えはもともとはイギリスで生じたものでした。19世紀のイギリスは工業化で勢威を誇り、そうした中で女性の理想像として「夫を助け、支える存在」が重要視されるようになってきました。そうした社会ではもちろんのこと不倫は罪とされます。こうした考えを工業化を進めた欧米諸国はイギリスを頂点としてある程度共有していました。

 それが1900年代周辺ぐらいから、そうした理想的(とされる)女性像が成立しなくなっていきます。「新しい女性たち」と称される既存の女性像とは異なる振る舞いをする一群の女性たちが出てくるのです。今回紹介する『目覚め』はそうした動きの中から生まれてきた「不倫を肯定する」小説です。それまでの英米系の小説では「不倫はあってはならないこと」として描かれてきました。そうした小説の慣習に真っ向から反することをやり遂げたのがケイト・ショパンです。

 『目覚め』というタイトルからもわかるように、「かくあるべしと取り決められた女性像」から抜け出した状態のことを「目覚めた状態」というように定義しています。主人公のエドナは夏のリゾート地で出会ってしまった男性と恋に落ち、そしてリゾート地から戻り、恋人がメキシコに行ってしまっても、彼のことを慕い、自分の意志で自立的に生きていこうとします。そうしたエドナの様子を周囲の人々は頭がおかしくなったという風に考えて、医者に相談してしまうような場面も出てきます。恋人の男性と再会することができたのですが、男性の方は「不倫は悪だ」という既存の道徳観念の影響下にある人であるために、エドナの恋は実らずに終わり、エドナの自殺が暗示されながら物語は終わります。

 このように、この『目覚め』という作品は不倫が一切許容されない時代に書かれた不倫小説なわけです。この小説を現代の日本人が読む価値は大いにあるのではないかと思います。というのも、欧米に遅れること90年ぐらいでようやく日本も「不倫」が大手を振って肯定的に語られるようになってきたからです。*1これからの日本社会がどのように変わっていくのか、そうしたことを考える一つのきっかけとしてこの小説から「女性像」の変遷を追いかけていけば、高い精度でこれからの日本が予想できると思うわけです。

Awakening

Awakening

目覚め

目覚め

失楽園〈上〉 (角川文庫)

失楽園〈上〉 (角川文庫)

*1:私が高校生の頃には『失楽園〈上〉 (角川文庫)』がドラマ化されていたっけ。でも、『失楽園〈上〉 (角川文庫)』の場合は男女ともに不倫に積極的でしたが